北海道は、日本列島の中でも大変に特徴のある海に四方を囲まれています。
 日本海岸では、おもに夏期に黒潮の分岐流である対馬暖流が北流していますし、オホーツク沿岸では、冬季に低塩分の表層水にのって流氷が到来し、夏期には黒潮(対馬暖流の宗谷海峡を通った部分)が南東向きに流れます。
 太平洋東岸(襟裳以東)では常時親潮が流れており(冬季に卓越する)一方、太平洋西岸では、冬季の親潮と夏期の黒潮(対馬暖流の津軽海峡を通った部分)が交代します。
 親潮の流入域では、海流自身が栄養塩類に富むので、陸からの負荷が加わるとCODの基準値(2mg/l)を超えることがありますが、自然の現象でありむしろ栄養源と歓迎されているところです。
 幸いなことに北海道の沿岸は、ホタテの貝毒問題等はありながらも、東京湾や瀬戸内海のような深刻な海洋汚染を経験しておりません。日本海岸に至っては貧栄養で、施肥さえ検討されているほどです。
 北海道で定期的で実施している沿岸環境の調査は岸から1〜3kmの範囲で港湾や大工場の排水口付近の15水域です。図−1に夏期の海流の流況模式図を示します。
 工場などから出される色の着いた排水は、一見、海をひどく汚染しているかに見えますが、開かれた系の海に出ている限りは、分解されたり、光合成に利用されてたりする結果、海洋環境の汚染を著しく進行させている傾向は見られません。
 最近、地球規模での環境汚染が問題にされ出していますが、難分解性のBHCやPCBなどの人工塩素化合物については、海洋及び海洋底がそれらの最終受け皿となるので深刻な問題となっています。
 海水のPCB濃度は1mg/lの10万分の1と普通は検出できないほど低いのですが(通常2千分の1mg/lを下限としている)、海鳥や海獣のような捕食段階の上の生物では食物連鎖により濃縮されてその濃度は、1〜10mg/lになります。
 さらに以上のタイプと異なった汚染物質として、注目されだしたのが、有機スズ化合物(OTs)です。
 スズ(錫)は融解して板ガラスの製造に用いられたり、合金としてハンダや活字に、メッキとしてブリキなどに用いられてきた身近な金属です。有機スズのうちDi一体(有機物が2個付いた物)は主にプラスチックの安定剤に、Tri一体(3個付いた物)は船底塗料や農薬などの殺生物剤用として図−3のように盛んに生産されました。
 ところが、1976年頃から有機スズの毒性が見直されはじめ、日本でも1987年に全国漁協連合会が有機スズ系漁網防汚剤の使用自粛を申し合わせました。
 環境庁による全国調査も行われ、1984年の結果では42の調査地点の中で、有機スズが検出されたのが魚介類で12地点、底質では14地点でした。
 北海道でも、有機スズに関して平成2年度は5海域(定置網)、1港湾(船底塗料)、2河川(ビート褐斑病用の農薬)について水質・底質の実態調査を行い、目下当所で精力的に分析が進められており、快適な海洋環境の保全をめざしております。
(斎藤修)

■酸性雨つらら■
 最近、コンクリートの橋桁やビルの地下駐車場等で、写真のような白っぽい「つらら」が垂れ下がっているのが各地で見つかっており、マスコミでは、これらを通称「酸性雨つらら」と呼んでいます。「つらら」生成については、東京大学、千葉工業大学などで研究されています。これによると、建築後かなり時間が経ってコンクリートの中の水酸化カルシウムが空気中の二酸化炭素によって炭酸カルシウムとなり、それが、後に雨などに溶かされることによって「つらら」になるとされています。
 また、酸性雨の影響がある場合、「つらら」の生成が速いこと、酸性雨の主成分の一つである硝酸の影響によって、コンクリートには含まれていない硝酸塩が「つらら」の中に見られることが、特徴となっています。
 最近になって、道内各地でも「つらら」が見つかっており、当研究所では札幌市内で採取(建築後25年のマンションのベランダの天井部)した「つらら」の成分分析を行いました。その結果、図のように炭酸カルシウムが主成分(約94%)であることが分かりました。また、少ないながらも硝酸イオンが0.1%ほど認められ、これは酸性雨の影響を受けている「酸性雨つらら」の可能性があると考えられます。
(野口)

【国設利尻局−モニタリングスタート】
 国設の利尻酸性雨離島局の開所式が11月30日、環境庁の奥村大気規制課長をはじめ関係者の出席のもとで行われました。
 局舎は仙法志の北北西約1Hに位置し、利尻の厳しい風雪に耐えられるよう堅固な作りとなっています。現在、気象計器、酸性雨自動測定器がおかれ、風向、風速、雨のpH、導電率のデーターをとり始めており、逐次硫黄酸化物等の自動測定機も整備される予定です。
 今、環境問題は日本の雨雪の酸性化に及ぼす大陸方面からの影響など汚染物質の国境を超えた長・中距離輸送問題、さらには未規制有害物質による地球規模の環境汚染等、ますます複雑化かつ広域化してきています。利尻離島局はこれらを解決するための貴重なデータを提供してくれることでしょう。
(加藤)

◎室蘭市(公害対策係)の巻
 今回は北海道を代表する工業都市、室蘭です。「室蘭」=「公害」というイメージも今は昔。工業都市の宿命であった数々の公害問題を克服し、工業だけの「固い」街から、地球岬に代表される美しい自然景観を生かした、「潤い」のある、そして、鯨ウオッチングのような「夢」のある街へとイメージチェンジを図っています。
 公害対策係とは当所設立時の大気汚染調査に始まり、20年来のお付き合いで、環境調査などで昼夜を問わずご協力をいただいております。
 現在公害対策係は渡辺係長以下5人、大気汚染防止法による政令市のため、ただでさえ忙しい中、最近はゴルフ場、酸性雨、地下水汚染など多様化する環境問題にも積極的に取り組んでいます。
(加藤)

■電 子■
 近年、電子(エレクトロニクス)という言葉が、先端技術を象徴する言葉として使われる機会が多く、新聞記事などで親近感をもって読まれている。
 一方、分子や原子の科学的性質を決定する電子はエレクトロンと呼ばれ、一般にアレルギー感が強く活字になることが少ないようである。
 物質は分子からできており、分子は原子から、原子は原子核と電子からできている。電子は−(マイナス)の電気を帯びており、原子核の周りを回っている。電子の数は原子の種類によって決まっている。たとえば、水素は1個、またヘリウム、リチウム、ベリリウム、ホウ素、炭素、窒素、酸素は2から3・・・8個と増加する。
 原子核には、電子と等量の+(プラス)の電気を帯びた用紙があるので、原子は全体として中性である。膨電子の質量は、表のように陽子、中性子に比べると非常に軽い。
 牛乳ビン1本の水も重さは180Kだからビンには10モル(水1モルは18g)の水が入ることになる。1モルには6×1023の水分子(アボガドロ数)があるので、牛乳ビン中の水分子は6×1024個ある。
 また、水1分子中の陽子と中性子は18個(水素1×2、酸素16)である。したがって、水10モル中の陽子と中性子の重さは、18×1.67・10-24×6・1024≒180gとなり、水分子の重量は陽子と中性子と考えることができる。なお、牛乳ビンにギッシリと陽子を詰め込むと110億トンにもなる。
 ちなみに、日本の米収穫量は年間1014粒(つぶ)程度とされているが、そうすると牛乳1本の水分子数(6×1024個)は、米600億年分に相当する。
 600億年分の米粒が入っていると思って、1本の牛乳ビンを眺めるのも一興である。
(荒木)

 全国公害研協議会は、本年度から試験研究機関の職員で、業務に積極的に取り組み、調査研究等に顕著な功績が認められた所員に対し、会長表彰を実施することを決め、その第一回の表彰が11月15日に総会(東京)で行われました。
 全国に該当者が多数おられるなか、厳正な審査を経て7名が決定し、当所の荒木邦夫特別研究員もその一人として選ばれ、職員一同また関係者も大変喜んでいるところであります。
◎荒木さんのプロフィール
 昭和30年室工大卒業 道立工業試験場に勤務
   50年 脱臭法の開発研究で知事表彰
   52年 学位(工学博士)を取得
   54年 当所大気部長
   59年 特別研究員
 特別研究員になられてからは最近問題の酸性雪研究のプロジェクトリーダーとして活躍され、また、‘えころぶ北海道’の中でも好評な‘科学よもやま話’は1号から荒木さんが執筆しており、その内容はさすが熟年の研究者によるお話として皆様にお読みいただいてる事と思います。
(副所長 萬屋和光)

◎日野研究職員、博士号取得!
 水質部の日野研究職員が、平成2年9月に京都大学より理学博士号を取得しました。今後のほかの研究職員の励みになるでしょう。
 論文名は
 Metabolism of phosphorus and organic matter associated With physiological state  of phytoplankton in a highly eutrophic Lake Barato