広々としたヨシ原と点在するハンノキの林、そのなかを蛇行した川がゆっくり流れていきます。たくさんの動植物をはぐくみ、四季折々に変化する美しい姿は私たちの目を楽しませてくれます。本州ではほとんど失われてしまった湿原の風景を、北海道ではまだ見ることができます。現在、北海道には日本の湿原の8割にあたる約6万haの湿原があります。とはいえ、開拓の歴史の中で “不毛の地”であった湿地は次々と開拓されてきました。そして今なお多くの湿原がリゾート用地や農地、工業用地として開発され、消滅しているのが現状です。
 北海道の湿原の特徴として、泥炭層が良く発達していることが挙げられます。寒冷な気候が泥炭の形成に適しているからだといわれています。泥炭は、未分解の植物遺体からできており、条件にもよりますが1年に約1mmという遅い速度で推積します。湿原は、水位と泥炭の推積との関係によって分類され、そこに生育する植物の種類によってミズゴケ湿原(高層湿原)・ヌマガヤ湿原(中間湿原)・スゲ湿原(低層湿原)に区分されます。釧路湿原やサロベツ湿原などは、異なったタイプの湿原がいくつも組み合わさって一つの大規模な湿原になっています。
 北海道では、雪の多い日本海側でミズゴケ湿原の発達が多く見られます。残念ながら石狩や美唄あたりのミズゴケ湿原の発達が多く見られます。残念ながら石狩や美唄あたりのミズゴケ湿原はほとんどその姿を消してしまいました。現在では、サロベツ湿原で大規模なミズゴケ湿原を見ることができます。発達途上のミズゴケ湿原にはミズゴケが推積した“ブルテ”と呼ばれるドーム状の盛り上がりと“シュレンケ”と呼ばれるくぼみが連続して見られますが、やがて全体がレンズ状に盛り上がり最も発達したかたちになります。水分をたっぷり含んだフカフカのミズゴケの上にはツルコケモモ、ガンコウラン、ヒメシャクナゲ、食虫植物のモウセンゴケなどが生育しています。ワタスゲもミズゴケ湿原を特徴づける植物です。
 一方、積雪の少ない太平洋側では、大型のスゲやヨシを主体とするスゲ湿原とハンノキ林の組み合わせが多くなります。湿原の比較的水位の低い場所に分布しているハンノキ林は水位の変動などに対応して分布域を少しずつ変化させていきます。ミズゴケ湿原もみられますが、規模の小さいものが多くなります。ハンノキ林の林床や流水域などにはヒラギシスゲやカブスケの株が隆起した谷地坊主(ヤチボウズ)がたくさんみられ、特異な景観を作り出しています。平地に広がる釧路湿原や勇払湿原では、蛇行する原始河川を伴った典型的な姿をみることができます。
 山岳域には、アカエゾマツを伴ったミズゴケ湿原が発達しています。厳しい気象条件に耐えてわい生化したアカエゾマツが散生し、ミツガシワやヒツジグサが生育する池塘もあちこちにみられます。ニセコの神仙池や上川の浮島湿原など、周囲の山々をバックに広がる湿原は、たいへん美しいものです。
 この様な湿原は、冷涼な気象条件のもとで水と植物とが微妙なバランスを保ちながら、少しずつ発達を続けています。しかし、一度そのバランスが崩されると湿原の乾燥化が急速に進み、元の姿に戻すことは困難です。
 近年、世界各地で湿原を守ろうという動きが高まっています。日本でも釧路湿原が国立公園となり、昨年は、水鳥の生息地として湿地を守るための国際的な取り組みであるラムサーム条約締約国会議が釧路市で開催されたことは記憶に新しいことです。残された湿原を今後どう保全していくのか、私たちは具体的に行動をおこす時がきているのではないでしょうか。
(西川)

■厳しくなる水の基準値■
 水質の環境基準には二つの種類があり、一つはBOD 、COD等の「生活環境項目」で、これは利水目的毎(ABC)に基準値が定められています。もう一つは、全国一律に基準値が適用されるシアン、PCB等の「健康項目」です。平成5年3月に、今まで9項目あった「健康項目」が23項目と大幅に増え真下。それだけでなく、鉛やひ素は基準値が5~10倍に強化され、準健康項目とも言うべきクロロホルム等25の「要監視項目」が定められました。この様な大幅な改正は実に22年ぶりのことです。
 これは、'88年から106項目について検討されていたWHOの飲料水のガイドライン改定作業の完成をうけ26から46項目に強化された水道水基準の大幅な見直しに連動するものです。
 水道、水質の基準および要監視項目にはトリクロロエチレン等の有機塩素系化合物と有機銅やCNP等の農薬がそれぞれ10数項目追加されています。
 このような基準強化に伴い、平成6年度当初から当センターも増員を含む機構改革やクリーンルームを備えた清浄な実験室や、GC/MS等の分析機器など分析環境の整備拡充が予定されています。
 基準あるいは要監視項目にとりあげられるには次の三つの要素があってのことです。
 1.毒性(発ガン性)が確認された項目である。
 2.近年、一定の頻度で検出されている。
 3.その項目の分析方法が確立し普及している。
浄水器が人気商品となる今、安全な水と空気がただであったのは過去のこと。快適さを追求したとどのつまりが、水の危なさを生み出してしまったとは。
 石油浪費の上に成り立つ豊かさの見直しとか、エコマーク付き生活スタイルの選択、研究分野でのその理論的裏付けの環境倫理の確率や実践、普及が求められているのではないでしょうか。
(斉藤)

【白骨化する樹木―酸性霧犯人説?】
 環境庁は、平成6年度から関東北部山岳地帯で起きている樹木の立ち枯れについてついて調査を実施します。
 これらの原因の一つとして注目を浴びているのが酸性霧ですが、オゾンや寒風害などの影響も指摘され、専門家の間でも意見が分かれています。まだ、その犯人は確定されていませんが、複合的な影響が原因である可能性が強いのです。
 酸性霧の酸性度は、雨に比べて数十倍高く、植物生態系などへの急性的な被害が懸念されています。また、アメリカのロサンゼルスでは、酸性霧による車塗装や建物への影響、さらに呼吸器系など人体への影響も指摘されており、被害は植物にとどまりません。
 北海道でも過去に苫小牧において酸性霧の植物被害の可能性が指摘されており、平成4、5年度夏季に当センターが苫小牧市と共同で行った調査結果ではpH3.0~5.8と非常に酸性度の高い霧も確認されています。また、これらの酸性霧は、峠などの山間部でも発生することが知られており、今後も積極的に調査研究を行っていく必要があります。
(野口)

◎苫小牧市環境監視センターの巻
 今回は、環境問題に積極的に取り組んでいる苫小牧市環境監視センターをご紹介します。昭和45年に企画部防災課公害係として発足し、現在は所長以下15名のスタッフで活躍されています。
 昭和55年に道から委譲された市センターは調査分析業務はもちろん、平成4年から市の公害行政の窓口も担っています。
 当センターとは、前公害防止研究所時代から騒音、大気発生源、酸性雨、最近では本号のトピックスで紹介してしています酸性霧の調査などで協力していただいており、今後も多様化する環境問題に対応してゆくため益々のお付き合いをお願いしたいと考えています。
(野口)

■中途半端■
 小型で高性能のパソコンが安く普及し、人に見せる書類は、ほとんどワープロ清書になってしまいました。見やすいだけではなく、推敲と書き直しを重ねるには不可欠のパーソナル文房具になっています。
 表計算ソフトも大変普及しました。一大決心をして標準偏差を求めていたのが嘘みたいに思えます。データの計算が得意のソフトですが、外見には差がない数値と数字文字列を混用している例を、時々見かけます。前者は演算を機能させられますが、後者が可能なのは連結だけです。
 事務計算では0と空欄は同じ意味らしいのですが、科学計算の0は立派な数値です。空欄を嫌って“−”(ダッシュ)を入れてしまうと、集計計算をした時に件数に数える場合があります。これは外見で分かるからまだ良いのですが、厄介なのは“ ”(空白:スペース)を入れた場合です。空白には、全角と半角の2種類があって半角2個が全角1個とはならないことがありますが、ディスプレイ(CRT)上では区別できません。両方の空白とも件数に数えない“ ”(虚無:ヌル)と見た目には差がないので大変紛らわしくなります。
 いささか複雑な有無の定義も、0は透明飲料、空白は空瓶、虚無は瓶なしとみると、「空即是色」も一緒に分かった気になりませんか。
 虚無や空白と比べるとすっかり慣れ親しんでいる0ですが、身の回りには0のない時代の名残が結構あります。1階と地下の間は0階はなくて、(半端の)半地下ですし、1階と2階の間は(中途の)中二階です。
 何よりも暦そのものに0がありません。B.C.(Before Christ)とA.D.(Anno Domini)間の年数を求める場合、単純な足し算ではなく0年に相当する1を減ずる必要があります。そんな昔のことは知るか、ca.(circa=about)であると言うなら話は別ですが。
(斉藤)

 全国公害研協議会では平成2年度から業務に積極的に取り組み、調査研究に顕著な功績が認められる職員の表彰を行っています。
 このたび平成5年度に当所の環境科学部の井上恒則主任研究員が受賞されました。平成2年度の荒木元大気部長に続く受賞です。
 20余年にわたる水銀汚染やPCB汚染に関する調査研究、さらに合成洗剤に関する研究、近年ではゴルフ場使用農薬などの化学物質に関する調査研究などに対しての功労によるものです。
 授賞式は、平成5年12月1日に東京都庁で行われ土屋隆夫会長から表彰を受けました。
 さらに受賞記念祝賀会は、平成5年12月9日に札幌会館で行われ、土井保健環境部次長を始めとして50人を超える多数の関係者が出席して盛大に行われました。
(藤田)

◎庁舎の増築が平成4年12月暮れに完成し自然環境部解析室やクリーンルームなどが新設されました。続いて従来の庁舎の改築も平成5年4月には、終了。
 しかし、新たに水質の環境基準(情報コーナー参照)の項目が激増し、それに見合う分析環境がさらに必要となり平成6年度も庁舎改築が予定されています。