自然環境情報の解析
1 自然環境情報解析用ワークステーションの導入
 北海道環境科学研究センターでは、平成5年4月に自然生態系の保全及び管理に関する調査研究及び自然環境の評価手法に関する調査研究を行うため、自然環境部に自然環境保全科を新設しました。
 同時に、自然環境情報の総合的解析を行うワークステーションコンピュータを導入し、様々な解析を開始しています。
 自然環境分野の情報は、北海道が広大な面積を有すること、調査の歴史が浅いことなどからこれまで十分に蓄積されてきませんでした。
 また、情報の内容も、大気や水質のデータと異なり、数値化されたものが少なく、多くは、文献や地図の形で保存されています。
 このため、自然環境の分野では、データの量と質の問題から、公害の予測で一般的に行われるシミュレーションなど数値的解析はほとんど行われてきませんでした。
 しかし、近年のコンピュータの急速な進歩が自然環境の解析手法を大きく変えようとしています。
 GIS(Geographic Information system) と呼ばれる地理情報処理システムが、これまで不可能であった地図の演算を可能にしました。また、人工衛星や航空写真など、画像を解析するリモートセンシング技術も処理時間が短縮され、また、流域全体といった広いエリアも解析できるようになりました。
 さらに、表紙の写真に示すように、画像と地理情報を組み合わせて解析することができます。
 これにより、人工衛生画像から市町村や自然公園の区域を切り出し土地利用の状況を集計したり、道路や河川沿いの植生分布を抽出したりできます。また、動植物の分布と機構や地形といった環境との関連も解析することが可能となります。
 当センターに導入した機器は、本体は、データベースを構築するワークステーションサーバーと画像解析、地図情報処理を行うワークステーション2台で構成され、これらにパソコンが接続されています。解析ソフトは、人工衛星や航空写真の解析を行う画像解析ソフトとしてアーダス、地図情報の解析を行う地理情報処理ソフトとしてアークインフォを採用しています。
 機器やソフトの選定は、現在、世界で最も利用されているものを基準に選びましたので、今後、世界中の機関や研究者と情報の交換がスムーズに行うことができるようになります。

2 自然環境保全施策支援システムの構築
 自然環境情報の総合的な解析が可能な機器が導入されたことにより、これからの自然環境保全施策の立案や実施は、データに基づいた、より科学的なものとなっていくことが期待されます。
 しかし、コンピューターが導入されたからといって、自動的にデータが集まるわけでも、自然保護区が増えるわけでもありません。
 このコンピューターを有効に活用していくためには、単に解析プログラムを開発するだけではなく、その前段となる自然環境のモニタリング手法や、解析された出力結果の活用手法を含め、環境情報の利用について総合的に検討する必要があります。
 このため、当センター自然環境部では、情報のインプットからアウトプットまで情報の流れを体系的に整理し、より効果的に自然環境保全施策を支援するため、自然環境保全施策支援システムの検討を始めています。
 具体的には、1.人工衛生画像等を利用した効率的な環境モニタリング手法の確立、2.人工衛星データ、各種環境情報、社会経済情報等の情報をとりまとめた自然環境情報インベントリー(目録)の作成、3.人工衛生画像、航空写真、地図情報及び各種環境情報を用いた環境の現況や変化に関する解析手法の開発、4.総合的な自然環境評価手法の開発を行い、さらには5.解析結果を自然環境保全施策へ連携する手法の検討を行う予定です。
 世界の中の日本を考えると、公害防止の分野では、先進国と言われますが、自然環境の分野では、アジアの中でも後進国と言わざるを得ません。今後、このシステムを構築し、世界に向かって北海道の自然環境情報を発信していきたいものです。
(金子)

■インターネット■
 最近、「インターネット(internet)」という言葉をよく聞きます。広義には、各組織のコンピュータネットワーク(LAN)を相互に接続して、より広域なネットワークを構成すること、及び、その構成形態のことを指します。しかし、今マスコミ等で取り上げられているのは、狭義の「インターネット」で、米国の全米科学財団(NSF)が出資して作った研究・教育用のコンピュータネットワーク(NFSnet)と、それに接続している世界中のコンピュータネットワークの総称です。
 このインターネットを利用すると電子メール(E-mail)による情報の交換、データベースや掲示板(NetNews)へのアクセス等による情報の収集、外部への情報発信(WWW、WAIS)等が世界中のコンピュータと可能になります。当センターにおいても、一昨年に所内LAN(NetWare)を導入してハードディスクやプリンタの共用を開始し、昨年末にはインターネットに接続して電子メール等の利用を開始しました。
(棗)

【落石岬−地球環境モニタリングステーション開設】
 近年、地球温暖化、酸性降下物、成層圏オゾン層の破壊等の地球規模での環境問題がクローズアップされています。そんな中で地球環境研究センターの落石岬−地球環境モニタリングステーションの開所式が1994年6月、関係者の出席のもとで行われました。
 局舎は根室半島の南側にある落石岬の先端に位置し、北海道の厳しい風雪と寒さに耐えられるよう堅固な造りとなっています。
 現在は、大気を採取するための50mの観測塔がすでに設けられ、主な温室効果ガスであるCO、CH、フロンガスの濃度を測定するための機器の準備が進められています。また、オゾン、硫黄酸化物等の自動測定機も逐次整備される予定です。当センターでも、汚染物質のバックグランド濃度の把握、長・中距離輸送問題の解明に向けての共同研究を行っています。
 波照間モニタリングステーション(沖縄県)に次ぐ第2のステーションとして設置されたこの落石岬モニタリングステーションは、地球温暖化対策のための貴重なデータの提供が期待されます。
(秋山)

◎大韓民国から海外技術研修生
 7月から海外技術研修生として、崔炳旭(チェビョンウ)さんが、当所で研修を行っています。
 崔さん(24才)は、釜山出身で大学を卒業したばかりで主に「水質環境保全」の研修を目的として平成7年3月23日まで在札の予定です。
 日本語を学びながらの熱心な研修態度には、礼儀正しい好青年と衆目の一致するところです。
 崔さんが当所で研修を無事終えられた後、母国の環境保全の分野で活躍されることが期待されております。この研修は、我々にとっても国際協力を身近なものとして感じられる貴重な機会となっています。

◎黒竜江省と環境保全に関する交流
 道と姉妹友好地域である中国黒竜江省との交流は、1983年から始まり教育や農業などの分野ですでに行われています。しかし、環境保全に関する交流は、ほとんどありませんでした。このため環境分野での両地域の交流推進を目的として伊藤環境科学部長と本庁の梅田主査が、7月24日から12日間にわたり黒竜江省を視察しました。
 視察地は、哈爾濱市(ハルピン)大慶市(ターチン)などの重工業、石油化学工業都市などで、短期間ではありましたが水質や大気環境、自然保護などについて精力的な情報交換が行われました。
 その結果、平成7年度以降、両地域の環境保全に係わる交流が活発化する事が予想され、国際交流の一環として貴重な機会となりました。
(藤田)

◎センターの見学者から
 センターは、平成3年、地方の公害研究所として初めて自然環境も研究対象とする施設になりました。その後、以前に比べ見学や視察に訪れる人の数が多くなっています。私たちの仕事を理解してもらう良い機会であり、積極的に対応しています。平成6年6月に見学に来た札幌明清高校の皆さんから嬉しい感想文をいただいていますので、イラストを含めてその一部を紹介します。(佐藤)
 「今、海や川、湖は、人間の手 でじわじわと汚されている。(略)でも、話を聞いて、少しホットした。こうやって湖がキレイになっていくのは、センターの人達が、いつも見てくれている訳で、すごい仕事だなぁ・・・・と思った。大変だと思うけど、こういう方々には、“影”という形になるが、地球を守っていってほしいと思う
(2年 金住香絵子)

■研究生活を振り返って■
 私が今年の3月で環境科学研究センター(以下、環境研)を退職することになり、この節目に「えころぶ」の編集者から原稿の依頼がありました。生来筆無精の上、最近はとみにkeyman化し筆を持つのが拒絶反応的になっていましたが25年間お世話になった環境研の前身である公害防止研究所(以下、公害研)、環境研生活を振り返って筆をとる次第です。
 昭和45年に時代のニーズにより 公害研が設立され私は大気汚染、悪臭、騒音等の大気環境担当研究職員として配属になりました。
 設立当時は毎日の新聞に「公害」の記事のない日はありませんでした。四日市ぜんそく、水俣病、イタイタイ病、カネミ油症等が大きく取り上げられ社会問題化し、道内においても製鉄工場からの大気汚染、都市中心部のスモッグ、6価クロム汚染等が問題になるなど、日本はまさに「公害列島」であるとマスコミは大きく書きたてた。そんな時代でもありました。
 このような背景から公害関連法が次々と施行され我々は道内一円の実態把握、監視指導と合わせて測定法、影響評価等についての研究に追われたことは昨日、今日のことと思えます。その間、思い出に残ることは「官能試験法による悪臭対策指導要綱」「北海道脱スパイクタイヤ推進条例」等の策定に取り組んだことでした。このような公害に対する各種施策が効を奏し次第に世の中も「公害」から「環境」へと見方が移り変わってきました。しかし、我々環境マンに息をつかせる間もなく化学物質による地下水汚染、ゴルフ場等からの農薬汚染、さらに地球の温暖化、酸性雨(雪)などによる生態系への影響が取りざたされるようになりました。
 平成3年にはかねてから念願であった公害研を拡充改組し野生動植物や自然環境を含む環境問題に総合的に対処するための環境研が新設となったことは、私の第2のステップとして退職に至るまで環境問題に情熱を燃やしつづけられた否めない事実となりました。
 また、私が一生忘れることが出来ないことになったのは環境庁創立20周年記念・地方公害試験研究機関功労者として国務大臣・環境庁長官表彰を受けたことでした。大気環境の調査・研究に多年にわたりたずさわせて頂き表彰を受けることになったことは偏に、道庁という大きな後盾の中で先輩並びに同輩、後輩また市町村職員の皆様方の一方ならぬ御尽力があったればこそと改めて紙面をお借りしてお礼申し上げたいと思います。
 これからの環境研は従来から鋭意取り組んでいる監視、調査等のローカル的なことはもとより、さらに究極的には地球全体の生態系についてより良い環境を作り出す一員となるよう努力をはらわなければと考えております。
 例えば、人為的な影響が自然界の循環系を狂わせ人間、動物、植物等の生存に対して好ましくない方向に向かっていないか、そして軌道修正を必要とするのかなど、今後、解決していかなければならない課題は山ほどあります。しかし、これらのことは非常に難問題であり、我々、一機関でやろうとしても所詮は無理、地球規模のことは地球全体で考えなければならないと思います。そのためには、我々はその一試験研究機関として大いに活用されるよう諸研究に励む必要があるのではないかと思います。
 終わりに一言「温故知新」昔のことを尋ね求めて、そこから新しい見解・知識を得るという論語の一節がありますが、25年有余の公害研、環境研の貴重なる研究成果を顧みて新しい環境科学研究に研鑽されることを心から祈念いたしまして筆を置く次第です。
(白川)

 昨年度の井上主任研究員に引続き、伊藤英司環境科学部長が全国公害研協議会会長賞を受賞しました。
20数年にわたり「河川における拡散現象の評価や河川の水質汚濁制御」「単一成分系及び多成分系の凝集機構等に関する調査研究」「トリハロメタン生成要因物質の制御に関 する調査研究」等の功績によるものです。
 授賞式は、平成6年11月30日、東京都庁で行われ、土屋隆夫会長から表彰を受けました。
 さらに記念の祝賀会は、同年の12月5日に札幌会館、末広の間で行われ、土井保健環境部次長を始めとして70名もの多数の関係者が出席して盛大に行われました。
(藤田)