”エゾシカ”と聞いてどのようなイメージを持ちますか?農林業に被害を与える害獣というイメージでしょうか。それともディズニー映画のバンビを思い浮かべるでしょうか。
 エゾシカ(以下シカとする)は北海道の自然を代表する野生動物の一つであり、生態系の重要な構成要素です。草食獣という1次消費者として、植物や他の生物・非生物環境と深い関わりを持っています。また、今日までの長い歴史を通じて、北海道の自然を形造ってきた一因でもあります。
 先人たちは、シカを利用しながら、シカと共に生きてきました。北海道の地名には、シカと関わりの深いものが幾つかみられます。例えば「空知川の上流の」という地名はユクトラシペツ(鹿が・登る・川)の意とされています。白糠町と足寄町の境界にあるウコタヌキプリという山は別名ユクランヌプリ(鹿・下りる・山)と言うそうです。獲物としてシカは生活を支える資源として、たいへん重要なものであったことでしょう。現在でもシカは狩猟資源として、最も価値の高い動物の一つだと言えます。
 明治時代、古い文献には毎年10万頭前後のシカを捕獲していた記録が残っています。それまでの乱獲と全道的な大雪によって、シカ個体群は絶滅寸前にまで追い込まれ、分布域は、阿寒や十勝・日高地方の一部に限られてしまいました。その後1920〜1956年にシカの捕獲が禁止され、生息数は徐々に回復しました。1970〜1980年代にかけてシカの分布域は再び拡大し、生息数は爆発的に増加しました。1960〜1980年代の農地や林地の開発による環境の大規模な改変が生息数の増加に影響したと考えられています。その結果、道東地域を中心に農林業被害や交通事故などが急増し、大きな社会問題となっています。国立公園などでは、シカの採食圧によって林床植物や広葉樹が減少するなど、自然植生に大きな影響を与えていることが判ってきました。
 このシカ問題を一つの契機として、シカをはじめとする野生動物の保護管理が強く求められるようになってきました。北海道では平成8年度に「北海道野生動物保護管理指針」を策定し、科学的なデータに基づく適切な保護管理を進めようとしています。平成10年3月には、シカの絶滅を回避し、かつ農林業被害などの軽減および生態系の保全を主な目的とした「道東地域エゾシカ保護管理計画」が策定される予定です。
 道東地区野生生物室は当センター自然環境部の分室として平成9年6月、釧路支庁の中に開設され、シカを中心にした道東地域の野生動物の生態や保護管理に関する調査研究を行っています。特にシカについては、保護管理のためのモニタリング調査の実施が重要な役割の一つとなっています。
 例えばシカの生息数の増減を把握するため、ヘリコプター調査やライトセンサス(夜間のスポットライトを用いた個体数調査)を行っています。ヘリコプター調査では、道内で最大規模のシカの越冬地である阿寒湖周辺や白糠丘陵の上空を飛行します。多い時では1日1000頭以上のシカをカウントすることもあります。群れのサイズや構成を把握し、シカの分布構造を知ることができます。
 シカの生態や生活史を個体レベルで明らかにすることができるテレメトリ調査にも取り組んでいます。この調査では、捕獲したシカに電波発信器を装着・追跡し、個体ごとの季節移動や環境利用および死亡要因などを知ることができます。これまでに直線距離で40〜60km以上離れた生息地の間を初夏及び初冬期に行き来していることなど多くの知見が得られています。
 保護管理を進めていく上で、管理目標やその方法について地域の合意形成が重要です。本庁自然環境課や道東の各支庁と連携をとりながら、調査研究の成果をもとに、地域のエゾシカ対策連絡協議会などで議論を進めています。
 今後は、シカ個体群の変動と生息環境の変化などを長期的な視点で明らかにしていきたいと考えています。また、道東地域の特色ある生物相の多様性やその保全に関する研究を進めていきたいと思います。シカなどの野生動物が住むことのできる自然環境は、私たち人間にとってもかけがえのないものです。環境問題がクローズアップされる昨今、私たちは自然環境の尊さにやっと気がついたのではないでしょうか。自然の一員である野生動物との共存に向けて、本気で取り組まなければならない時代に来ていると感じています。
(道東地区野生生物室 宇野)

■海に棲む鳥たち■
 海に棲む鳥たちの世界も、もはや人間社会とは隔絶してはいません。人間の行動に起因する繁殖地への捕食者の侵入、漁網等への混獲あるいはタンカー事故が、海鳥類の生活を脅かす大きな問題となっています。
 ウミガラスは羽幌町天売島の”オロロンチョウ”として有名であり、エトピリカは道東のシンボル的海鳥類(浜中町の”町の鳥”)といえますがともに数が減っています。そしてチシマウガラスは”ウ”の仲間ですが、「幻の鳥」といって良い状況です。そこで環境庁ではこれらの鳥を「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」の「国内希少動植物種」に指定しています。
 また、道はウミガラスについて保護調査活動を行っており、平成7年度からは道東においても海鳥類の生息数調査を開始しました。当センターではこれらの現地調査の一部を担当してきました。平成8年度から環境庁の北海道希少海鳥類保護増殖事業がスタートしたことに伴い、当センターにおいても国内外の文献調査(効果的な保護増殖手法についての情報収集および検討)や道内繁殖地の生息数動向の解析を行いました。さらに道東においてエトピリカの繁殖行動モニタリングを進めています。
 また、環境庁及び北海道環境生活部は検討委員会を設置し、海鳥類の保護に関するプランの策定準備を行っているところです。平成8年度には、環境庁により羽幌町に北海道海鳥センターが開設され、国と地方自治体と地域で実際に海鳥保護に関わっている方々を結ぶ‘かなめ’の施設ができました。  今後はこれらの機関及び現地の方々と協力しながら、北海道の良好な自然環境のシンボルとして海鳥たちの生活の場を確保することについて、調査研究といった面からサポートしたいと思います。
(野生動物科 長)

■丸い地球の一角で■
 日常生活で、地球が球であることを実感する機会は少ないが、国土地理院発行の地図を良く見ると台形であり、左右には単純につなぎ合わせられない。縦に八等分してむいたリンゴの皮を思い浮かべてもらえば良い。
 地図(Map)は地図帳(Atlas)と違って綴じられていない。枚数が多くなると管理が難しい。1913年と言うから85年も前に、国際地理学会議は難しい事を見越して、整理・検索のための地図番号を定め、それは地形図の左肩に打たれている。しかし、それは混乱に拍車をかけるようなもので、整理にはこの番号を無視するのが正解である。球面を平面に折り合いを付けているのが地図であり、そのほころびは冒頭に見たとおりである。整理は平面を直線に書き換えることと言えるが、地図番号はその進行方向が各ステージ(スケール)で異なっていて、隣を連想することが非常に難しいからである。
 1976年に定められた、JISの地域メッシュコード法の番号は、まだしも理解しやすい。ステージと言う言葉を使ったのは、縮尺の大小がこれまた混乱しやすいからである。
 南北に4°、東西に6°毎の地図が国際図(100万分の1)と言う。これを6×6に36等分した図を地勢図(20万分の1)といい、さらにこれを16等分、あるいは64等分したのが地形図(5万分の1、2万5千分の1)である。
 地形図には台形の寸法がcmで示され、最近は右肩に6桁のコードが打たれている。ちなみにこれらの地図はA2より縦横に約1〜2cm大きい柾判であり、地形図の縦横の比は、那覇で1:1.345、稚内で1:1.172となる。
 大部分の国が国際標準時から整数時の差を標準時にしている。9時間の差である、E135が日本標準時子午線に選ばれたのはもっともな話。この子午線は明石以外にも、5市11町をも通過していて、秋田県の八郎潟にはN40、E140の記念碑があり、他にも多数建てられている。
 国際図索引番号の刻み線の交点は、日本広しと言えど、陸上に限るならば北海道の常呂町のN44、E144地点と、長野県辰野町のN36、E138地点の、たった二点しかない。しかも常呂町のそれは、秋田県大潟村の緯度経度と同様に、数字の、見た目もそろっていて、記念の意味は決して劣らない。誰の所有地かは調べていないが、多分、畑か原野であろう。記念碑樹立はともかく、今後は、常呂町・福山小学校・南方向2km地点には注目していただきたい。
 
(水質環境科 斉藤)

■ヨーロッパでの環境研修■
 地方自治体においても昨今、海外交流が活発化してきています。北海道でも職員の派遣について各種の制度があります。今回、企画振興部(現総合企画部)の「海外技術導入促進事業」により「湖沼、ダム湖の富栄養化機構の解明と水質改善技術の導入」というテーマで衛生研究所の高野敬志氏(飲料水衛生科)と共に1996年11月に3週間ほど欧州の研究機関を訪問する機会を得ました。(詳細は所報第24号に掲載)。
 訪問したのは、イギリス、デンマーク、ドイツの3カ国5研究機関です。ここでは各国で特徴のあった建物構造について述べます。各研究所の建物はいずれも特徴があり、イギリスでは正面部分は歴史・風格があり以前ホテルであったものをそのまま使用しているとの事でした。但し裏側は増築して4階建てのビルでした。デンマークはレゴランドでもあるので、建物のみならず内外装、研究室、その他の部屋にあるテーブルやイスの形や色使いは独特のセンスがありました。ドイツは3階建てのビルでしたが、プルーン湖に接した臨湖研究施設であり、裏口は湖調査へ向かうための桟橋に通じており合理的な機能も感じられました。これらは一見して研究施設と分かるのですが、デンマークとドイツの別の研究施設は、住宅地にあり、なおかつ建物を活かして使っていたので指定の住所に行ってもこれが研究施設と疑うばかりの住宅のような建物でした。欧州は石の文化ということで、昔の建物が残っているということでしょう。
 最後に環境ということで1つの話を、ドイツの研究所で所長が我々に廊下のポスターについて説明している時に、電灯がよく消されたのですが、話によると「Save the energy」の取り決めがあり、不必要なところの電気がついていると誰彼ともなく消すとのことでした。全体的に限りがある資源を大切にすると同時に人と生物の共存ということが常に根底にあったように思われ、貴重な体験ができました。
 また、他の研究職員の国際的な取り組みとして、野口研究職員が「大気汚染(特に酸性雪)の調査研究」でイギリスほか3カ国、福山研究主査が「海洋における水質汚濁物質の挙動及び移送」でオーストラリアほか2カ国で研修を行いました。
 
(水質環境科 石川)

■温暖化防止京都会議と自治体の取り組み■
 昨年12月、気候変動枠組み条約第3回締約国会議(温暖化防止京都会議)が開催され、各国の利害が対立する中、最終日にようやく議定書が採択されました。二酸化炭素(CO)の削減では、先進国全体で5.2%、国別では、日本6%、米国7%、欧州連合8%と決まりました。この削減率は、当初予想されていた数字より高い決着となりましたが、森林などの吸収源を差し引くネット方式や、削減の達成が難しい国と余裕のある国とが排出枠を売買する排出権取り引きなど抜け道が多く、決して満足のいく成果ではないというNGOの声も聞かれます。
 日本では、1990年を基準年として、2008年から2012年の5年間で6%のCOを削減しなければならず、現在の生活様式を続けていく限り目標達成はかなり厳しいものと予想されています。国では、産業、電気、運輸、民生各部門でのCO削減や新技術の開発など対策を急いでいますが、今後、各地方自治体でも具体的施策を立案遂行し、削減に向けて努力をしていくことが必要です。すでに京都市では、2010年までにCO排出量を1990年レベルの10%削減するという目標を掲げ、温暖化に積極的に取り組んでいますし、札幌市では、2017年までに市民一人当たりの排出量を10%削減することにしています。また、神奈川県では、昨年9月に制定した「神奈川県生活環境の保全等に関する条例」の中で、県民の責務として省エネを積極的に呼びかけています。道では、今年1月COだけでなくメタン、亜酸化窒素などの温室効果ガスの削減のため、具体的な削減率を示す独自の数値目標の設定を目指すことを決めました。CO以外の温室効果ガスの数値目標を定めた例はこれまで無く、今度の政策が期待されます。
 京都会議以来、各地方自治体の温暖化に対する積極的な取り組みが目立つようになりました。しかし、たとえ削減目標を設定してもそれを達成するためには、一人ひとりの協力が必要です。ライフスタイルを見直し省エネを心がけることこそ今求められているのです。
 
(大気環境科 岩田)

■中嶋科長全国公害研協議会で受賞■
 中嶋敏秋環境保全部化学物質科長が平成9年度の全公研北海道・東北支部長表彰を受賞しました。26年間にわたり主に化学物質に関する調査研究や若手研究職員の指導育成にあたるなど多大な業績によるものです。授賞式は、平成9年5月20日に青森県での支部総会で行われ菅野勲支部長から他県の2名と共に表彰を受けました。
 
(企画調整課 尾崎)