岩内、余市、小樽、留萌・・・・かつてニシン漁で繁栄を極めた日本海沿いの町も今ではニシン御殿のみが往時を偲ばせます。
 何時頃からニシンが来なくなったのかは別にして、ニシンの減少は水温の上昇に起因するという学説があります。水温の上昇が回遊形態を変え、かつて産卵場所であった北海道の沿岸海域からニシンをなくしてしまったというのです。この水温の変動は、氷河期などの様な地球の自然現象によるものなのか、人間活動によるものなのか、また、ニシンの枯渇が水温の変動のみに因るのか未だ明確な回答はありません。ニシンの枯渇以外にも、沿岸海域は問題を抱えています。岩内の近くでは昆布等の海草類がまったく見られない"磯焼け"と呼ばれる沿岸海域が有りこの原因も、諸説紛々です。
 ともあれ、沿岸海域の水質が何かしら変化してきたことに違いはないようです。北海道の沿岸海域は水産資源の宝庫である一方で人間活動による汚水の最終放流地であり、近年の急激な沿岸海域の水質変化の主因が人為的な影響に因るものと考えざるを得ない状況にあるのも確かです。
 ここに雪解けが最も進む5月の石狩湾の衛星画像があります。石狩川河口部から湾の北部にかけて石狩川の淡水が遠く雄冬岬付近まで拡散していることが見て取れますが、この写真をみていると幾つかの疑問が湧いてきます。
◯石狩川の水質はどうなっているのだろうか?
◯石狩川の水は湾の水質にどのような影響を及ぼしているのだろうか?
◯魚類等の水産資源への影響はないのだろうか?
 これらの問題を解決する目的で、1998年から道立地質研究所、道立中央水産試験場並びに北海道大学との共同研究を開始し、興味深い幾つかの情報が得られました。
 石狩川の河川水は、遠く雄冬岬まで達しており、これらの淡水は有機物や栄養塩類を多量に含んでいるため、海水の水質や底質を悪化させていることや石狩川河口付近では懸濁物質などの堆積速度が1年間に約0.6g/cm2であることもわかってきました。この堆積物を年代毎に区切って分析し、汚濁の特徴を見てみると、クロム濃度の増加する時期が認められたり、鉱業の盛んな時期に鉱屑に因ると考えられる成分が見つかったりして、鉱工業や生活排水による過去の水質遍歴を知ることが出来ました。さらに、堆積物中のプランクトンの死骸から高度経済成長期に有機物量が多かったことや排水規制法の整備が進んだ期間に有機物が減少したこともなども知ることができました。
 現在、石狩湾の他に根室湾や釧路海域等で広域沿岸海域調査を実施し、海流が停滞しやすい港湾に多量の汚濁物質が放流されると恒久的な水質汚濁を招くことや栄養塩類も広く拡散すれば文字どおり水産生物の"栄養源"になることなど、徐々に沿岸海域の汚濁の現況や汚濁機構がわかってきています。しかし、化学物質のような、人の健康に直接関係してくる物質の含有量など、不明な部分が多く、さらに詳細な調査が必要な項目もあります。
 我々が口にする魚介類は、多くが沿岸海域から漁獲されたものであるため、沿岸海域の水質や底質は健全でなければなりません。このため、我々は、まず、沿岸海域の環境質が"どうなっているのか"を知るべく、海域調査や衛星画像解析等の最新技術を駆使し、新たな情報や環境改善策の糸口が見つかることを期待しつつ、詳細な現況把握に努めています。
(水質環境科 福山)

■環境ホルモンとバイオアッセイ■
 バイオアッセイという言葉を耳にしたことがあるでしょうか。バイオアッセイとは、バイオすなわち生物を用いて、アッセイすなわち検査をおこなう、というものです。つまり、ある化学的性質について、生物を利用して測定するということです。
 このバイオアッセイが活躍するのは、生物に対する影響を評価する分野においてです。ある決まった化学物質そのものの濃度は機器で測定できるのですが、その結果がどういった意味を持つのか、つまり安全なのか危険なのかという事は判定できません。生物を利用することによって、「少なくともこの生物には安全である」といった判定を下すことが可能になります。
 生物に対する影響にもいろいろあって、急性毒性、遺伝毒性(変異原性)、内分泌かく乱作用(環境ホルモン作用)などがあります。例えば急性毒性を測定するバイオアッセイ法にマイクロトックス試験というものがあります。これは実際に海にすんでいる発光バクテリア(ホタルと同じ原理で光る:写真)を用いる手法で、「毒性が強いほど光が弱まる」という簡単な原理に基づいています。また、この手法は測定も簡便であることから、多くの国において水環境の保全に役立てられています。
 また、ここ数年問題になっている内分泌かく乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)については、バイオアッセイの手法を無視することはできません。なぜならどういった化学物質が環境ホルモンであるのか、どういった作用で生体内の内分泌をかく乱するのか、といった基礎的な部分がまだ解明されていないからです。
 1998年に環境庁が打ち出した「環境ホルモン戦略計画(SPEED '98)」には、約70種類の化学物質が環境ホルモンの疑いがあるとしてリストアップされていますが、本当に内分泌かく乱作用があるかどうかははっきりしていません。そこでバイオアッセイの手法が必要になるのです。環境ホルモン活性の評価には、乳ガン細胞(女性ホルモン物質が存在すると増殖する)や酵母菌(女性ホルモンのレセプターを組み込んである)を用いたバイオアッセイ法が検討されています。特に酵母菌を用いたバイオアッセイ法は、操作が簡便であることから多くの研究所で採用され、環境ホルモン物質に関する基礎データが積み重ねられています。
(環境科学科 永洞)

■海のワシが山の中に・・・■
 ワシ類とは大型の猛禽類のことであり、北海道には、迷鳥をのぞくと、オジロワシ、オオワシ、イヌワシの3種が生息しています。このうちイヌワシは、山間部に生息するワシですが、オジロワシとオオワシはおもに冬鳥として海岸部に多く渡来します。このことからオジロワシとオオワシは海ワシとも呼ばれています。1980年代、スケトウダラが豊漁であったころは、羅臼の海にたくさんワシが集まっていました。その後スケトウダラの漁獲量が下がるとともに、ワシの数も減少し、氷下待網漁が盛んな風蓮湖などにたくさん集まるようになりました。
1997年ごろから、白糠町や阿寒町の山間部を中心に鉛中毒で衰弱したり死亡したオオワシやオジロワシが収容されるようになりました。山の中で海ワシが収容されることは驚きでした。山にすむワシがシカの残滓を餌にしていることや、鉛中毒の原因が鉛ライフル弾に由来していることはわかっていて、シカ猟が盛んな山間部で収容されることは理解できました。しかし、ワシの研究者もバードウオッチャーも、海ワシは海沿いにいるものという固定観念があったため、それまで山の中ではほとんど調査が行われておらず、山間部の生息状況はよくわかっていませんでした。
道東地区野生生物室では1998年度より阿寒町の阿寒川、白糠町の庶路川と茶路川の流域でワシ類の調査を進めてきました。この結果、3河川の中では庶路川流域でのワシの飛来数がもっとも多く、猟期終了後の2月に、庶路川の上流部に集中することがわかってきました。さらに阿寒地域では、比較的雪が多い年に幼獣を中心に多くのシカが自然死します。自然死がはじまるとその地域のワシはやや増加します。冬の北海道に渡来する海ワシ達は、餌のある場所によって巧みに分布を変えており、近年ではかなり山の中に入り込んでいるようです。
 山の中にたくさんのワシが飛来していることがわかり、道庁では鉛中毒防止対策として、地元市町村と協力してエゾシカ残滓回収ステーションを設置してきました。そして2000年度の猟期からはシカ猟に用いる鉛ライフル弾の使用を禁止することにしました。
(道東地区野生生物室 玉田)

■中国黒龍江省訪問■
 北海道と黒龍江省は平成8年度に「環境保全に関する協定」を締結し、技術交流を進めています。その交流の一環として、大気汚染物質自動測定機器の維持・管理に関する技術派遣要請を受け、平成12年3月に11日間、黒龍江省を訪問しました。ハルビン市にある省環境保護局、省環境観測センターなどのほか、ハルビン、大慶、牡丹江各市の環境観測センターを訪問し、大気環境保全に関する意見交換と自動測定機器に関する技術支援を行いました。
 現在黒龍江省には、友好提携地域である北海道や新潟県などから寄贈された二酸化硫黄などの自動測定機器が多数あり、訪問した各市でも市内数カ所にこれらの機器を配置し、測定を行っていました。その中には、異常値を示していたり、交換すべき部品が未交換のまま使用されているなど、いくつかの問題点も確認されました。
 中国では石炭の消費が多く、二酸化硫黄や浮遊粒子状物質濃度は北海道より高い傾向にありますが、今回訪問した3市では、暖房期にもかかわらず目立った空気の汚れは感じられませんでした。しかし、新しい環境問題として懸念されるのが、自動車公害です。交通量が年々増加し、各所で渋滞も見られました。走行する車の多くはタクシーなどの商用車ですが、今後、自家用車の普及率の増加に伴い自動車公害が深刻化する可能性があります。
 自動車公害を含め、着手すべき環境問題は数多くありますが、試料採取装置や分析機器の整備、操作技術の習得など様々な問題を抱えており、大気環境問題への取り組みが遅れているのが現状です。技術交流の必要性が、これからますます高まるものと思われます。
(大気環境科 秋山)



■野生動物保護管理の先進地を訪ねて■
 最近の10年間でエゾシカの個体数はうなぎ登りに増加し、農林業被害の激増のみならず国立公園の自然植生へ悪影響をもたらしています。
 私たちは行政と連携して、増えすぎによるエゾシカの害をできるだけ緩和し、道民と共存する方法を探るために、北海道東部地域のシカの管理計画を作り、本格的な保護管理へ着手したところです。このようなおり、野生動物の保護管理先進国のアメリカ合衆国とノルウェーで研修する機会を得ることができました。
 アメリカ合衆国では、連邦政府が希少種を、州政府は主に狩猟獣を対象とし、調査研究と保護管理体制が完備し、国、地方自治体、大学などの役割分担が非常に明確でした。このような先進的な保護管理システムが完備された背景には、大型獣の乱獲や絶滅が契機となっていることが伺えました。もう一つの研修先であるノルウェーでは、狩猟獣は土地に強く結びつき、土地所有者が狩猟権を所有し、国がモニタリングを行って捕獲数を割り当てる制度を採っていました。
 我が国では昨年1999年度に鳥獣保護法が改正され、科学性と計画性を持った近代的な管理へと第一歩を踏み出したばかりです。野生動物を保護管理する伝統も文化もありません。しかし、悲観することはありません。海外研修先での学会発表やセミナーを通じ、北海道におけるエゾシカの保護管理は、行政と研究の連携により、理論、データならびに管理が一体となって、それが狩猟者の協力で実施されており、世界的に見ても誇るべきものであることが実感できました。伝統や文化のしがらみがないので、理想的な保護管理方式がわずか10年で実行に移すことができた、と見ることができます。
 次の段階はエゾシカの保護管理について広く道民の支持を得ること、さらにはエゾシカを害獣と見るのではなく、自然資源とする文化を育む必要があると思いました。
(自然環境保全科 梶)

■全国公害研協議会表彰で受賞■
 棗庄輔総務部環境GIS科研究主査が平成12年度同協議会北海道・東北支部長表彰を受賞しました。28年間にわたり、調査結果のデータベース化、統計解析ソフトの開発、水環境の汚濁機構の解明などに取り組み、数々の業績を残したことが認められ、平成12年5月25日、新潟市での支部総会で福夛寛二支部長から表彰を受けました。
(企画調整課)


☆☆ ホームページもご覧ください!! ☆☆
http//www.hokkaido-ies.go.jp/