【第3回】

今回は「地球温暖化が農林水産業に及ぼす影響評価と緩和及び適応技術の開発」をご紹介します。

◆◆◆ 地球温暖化が農林水産業に及ぼす影響評価と緩和及び適応技術の開発 ~農林水産省~ ◆◆◆


これは農林水産省農林水産技術会議の委託プロジェクト研究として、2006年度から2009年度までの4年間にわたり、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構及び独立行政法人農業環境技術研究所を中心に実施した研究成果を取りまとめたものです。

農林水産分野における総合的な温暖化対策への貢献を目的として、

○農林水産生態系における炭素循環の解明
○農林水産生態系からの温室効果ガスの排出削減技術
○炭素吸収機能向上技術の開発
○地球温暖化が農林水産業に与える影響評価
○温暖化に伴う環境変動に対処する生産安定技術の開発

などの研究が報告されていますが、今回は「森林生態系の炭素循環の解明」にスポットを当てます。

森林の樹木などの植物は、日光を浴びて光合成により大気中のCO2を吸収して植物内に蓄積する一方、光合成や生きてゆくために必要な呼吸を行いCO2を放出します。また、落ち葉など地表面に落ちた植物体は、土の中の微生物や動物の働きで分解され、大気にCO2を放出します。 そのため、森林生態系全体でCO2をどれだけ吸収しているかを計算するには、吸収されて木の幹・枝や葉になったCO2量(総生産量)を見るだけでなく、呼吸や分解により大気に放出されたCO2量を差し引く必要があります。森林生態系全体のCO2総生産量から放出量を差し引いた値を「森林生態系純生産量(NEP)」といいます。

(参考:http://www2.ffpri.affrc.go.jp/labs/flux/review.html

森林総合研究所では、NEPを直接的に測定できる微気象学的方法(渦相関法)を用いて、タワー観測を開始した2000年から2008年の間で30分ごとに計算したNEP について、共通仕様による連続データを蓄積しています。 観測サイトは、図1101-1に示す気象条件の異なる5地域に設置して、それぞれの地域を代表する森林の炭素収支量を測定していますが、その一つが札幌(正式名称:札幌森林気象試験地)に設置されています。

出典:地球温暖化が農林水産業に及ぼす影響評価と緩和及び適応技術の開発 P60より


各サイトのNEP の季節変化のパターンは、サイトごとに異なっています(図1101-2)。落葉広葉樹林で積雪寒冷地域に位置する札幌と安比(岩手県)は類似した季節変化を示しています。 具体的には、冬期はほぼ一定値で炭素を放出(負)し、夏の着葉期に炭素吸収量が大きな値を示しています。

一方、常緑針葉樹である富士吉田(山梨県)や鹿北(熊本県)はほぼ一年を通じて炭素を吸収していました。鹿北では、高温と梅雨の影響で6月から8月にNEPが小さくなっていました。 山城(京都府)は元々森林の成長量が小さな里山の混交林であるためNEPは小さく、冬期はわずかの放出となっています。


2000年~2008年の平均値。
a)札幌は台風被害前2000年~2003年の平均値。
b)安比は虫害を受けた2007年を除く。

出典:地球温暖化が農林水産業に及ぼす影響評価と緩和及び適応技術の開発 P61より

報告書ではさらに、札幌は2004年の台風被害により、調査地の50%以上の樹木が折れたり倒れたりした結果、被害前に比べて夏期の炭素吸収量が半分になったが冬期の放出量はほとんど変化が無く、年間トータルでは放出の方が大きくなったことなどが述べられています。 2004年の台風被害を起こしたのは台風18号のことで、札幌市で観測史上最大の最大瞬間風速50.2m/sを観測、北大のポプラ並木を始めとして、道内各地で大量の風倒木などの被害が発生しました。その際、環境科学研究センターでは、人工衛星画像を解析して風倒木被害の概要把握に貢献しました。

(参考:北海道環境科学研究センターニュース第20号(2005)

以上のように、森林はCO2を吸収する、と一口に言っても、その量を把握しようとすると、なかなか複雑で地域や森林の種類・状態によって大きく異なることが分かります。落葉の季節、1枚1枚の落ち葉が実は地球全体の炭素の動きにつながっていることを考えると、落ち葉が少し違ったものに見えてくるかもしれません。


【今回ご紹介した文献はこちら・・・】
http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2039014665.pdf


【過去の文献紹介】
2013年09月12日 【第1回】  地球温暖化予測情報 第8巻 ~気象庁~ 
2013年10月10日 【第2回】  気候変動監視レポート2012 ~気象庁~ 

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