【第6回】

寒い日が続きますね。札幌は2014年に入ってから平年気温を下回る日が続いています。
「北海道の冬は家全体が暖まるよう暖房を効かせてTシャツ1枚で過ごせるくらい暖かい。」といったたぐいの話をよく耳にします。かつての北海道の家庭暖房はほとんどが石炭ストーブであり、火力の調節が難しく、かつ、火力を弱めようと空気の供給を少なくすると一酸化炭素中毒の危険や煙・匂いが出る問題があるなどの歴史的な経緯もあって、北海道人にはストーブは部屋を暑いくらいに温めるものという感覚があるのでしょうか。
直観的にも北海道の冬はエネルギーを他の地域よりも使いそうです。エネルギーを使うことは温室効果ガスを多く排出しているということにもつながりますが、では、具体的にどの程度、他の地域とエネルギーの使用量が違うのでしょうか?

今回は、そのような解析を行っている文献等をみていくことにします。

◆◆◆ 家庭・業務部門の温暖化対策 ◆◆◆
◇◇◇ 編者:藤沼康実(国立環境研究所)ほか(2008) ◇◇◇


地球温暖化防止に向けて、省エネルギーの促進、新エネルギーの導入、低炭素社会の構築など多くの温室効果ガスの排出抑制対策が進められています。その結果産業部門や運輸部門から排出される温室効果ガスの大半を占める二酸化炭素の排出量は低減傾向にあるものの、私たちの生活を取り巻く家庭・業務部門からの排出量は産業のソフト化や生活パターンの変化に伴って、多くの省エネ対策が講じられているのにもかかわらず増加傾向にあるとしています。
(下図参照)

出典:全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)より

ここで、二酸化炭素の部門別排出量ですが、ごく簡単に説明すると以下のようなカテゴリーになっています。 (詳細は全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト内:http://www.jccca.org/faq/faq04_10.htmlをご覧ください。)

〇エネルギー転換部門
 日本国内で供給されたエネルギー源を実際に利用できる形態にするため投入されるエネルギー。
〇産業部門
 第一次産業及び第二次産業に属する法人ないし個人の産業活動により、消費されたエネルギー。工場などの外部での運搬などの消費エネルギーは運輸部門に計上。
〇民生(家庭)部門
 家計が住宅内で消費したエネルギー。自家用車や公共交通機関の利用のエネルギー消費は運輸部門に計上。
〇民生(業務)部門
 第三次産業(水道・廃棄物・通信・商業・金融・不動産・サービス業・公務など)に属する企業・個人が、事業所の内部で消費したエネルギー。
〇運輸部門
 企業・家計が住宅・工場・事業所の外部で人・物の輸送・運搬に消費したエネルギー。

そこで、本文献「家庭・業務部門の温暖化対策」は、日本建築学会との連携のもとに、建築分野の温暖化対策技術を整理し、家庭・業務部門に適応可能な省エネ・温暖化対策への提案を行い、建築分野における今後の温暖化対策の策定・評価にむけた起点となることを目的としています。


 さて、冒頭の疑問「北海道と他地域のエネルギー使用量の違い」ですが、P31『統計データからみた生活・住宅対策について』(田中昭雄)に解析例がありましたのでご紹介します。
ここでは、家庭部門のエネルギー需要を推定する最も重要な統計として「家計調査」(総務省統計局)を用いて、地域別用途別のエネルギー消費原単位の解析で終わっていた従来の研究をさらに踏み込んで解析しています。具体的には、地区別(北海道、東北、関東、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州、沖縄)及び用途別(冷房、暖房、給湯、厨房、照明他)ごとのエネルギー消費原単位で終わっていた解析を、世帯因子の属性(世帯員数1人、2人、3人、4人、5人、6人以上)の因子を追加して『ベイズ推定』『遺伝的アルゴリズム』などの推定手法を用いて解析しています。

その結果の一例として、2005年の北海道と、関東の1人当たり年間エネルギー消費原単位の推定結果がP35の図2に示されています。


出典:『家庭・業務部門の温暖化対策P35の図2』より

推定結果の要点としては、
【1】単身世帯と2人世帯の原単位は各地でほぼ一致。3人目から原単位減少。
【2】北海道は6人以上になると原単位上昇。これは住宅規模が大きくなるためと推測。
【3】北海道の単身世帯は給湯と暖房の原単位が圧倒的に大きく関東の倍以上

などをあげています。また、北海道と関東の比較では特に単身世帯(北海道:7.3Gcal/人年:関東4.5Gcal/人年)及び2人世帯(北海道:7.3Gcal/人年、関東:4.4Gcal/人年)の差が大きく、目立っています。

また、さらに2人世帯を「夫婦65才以上」と「他2人世帯」に分解した分析結果がP37の図4に掲載されています。

出典:『家庭・業務部門の温暖化対策P37の図4』より


解析結果では、高齢夫婦のエネルギー消費原単位は、その他の2人世帯のエネルギー原単位よりも北海道では10%以上大きいとしています。特に暖房需要の差が約20%(夫婦65才以上:8.24/戸年:他2人世帯:6.86Gcal/戸年)あるとしています。
 

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私(注:気候文献シリーズ担当者のこと)の自宅のストーブは室内温度を自動で設定してくれますが、同じ温度であっても暑く感じることがままあります。そんなときはストーブを消火し、適温になるまでの間は半袖で過ごすこともあり、もっと効率的なストーブの使い方ができたと反省します。
また、居間とキッチンの間を断熱カーテンで仕切って、ストーブが温める空間を狭めようとしたのですが、これはいちいちカーテンを開け閉めしなければならず面倒なのでやめました。
更には、トイレに暖房が入っておらず快適性を高めるためにどのようなことが可能なのか検討中です。
今回ご紹介した文献の解析結果の一つである「北海道の単身世帯1人当たりの暖房需要が高い」は私にも責任がありますので、どのような対応が可能なのか、自分の生活の快適性も考えながら検討していきたいと思います。

【今回ご紹介した文献はこちら・・・】
http://www.cger.nies.go.jp/publications/report/i079/i079.pdf


【過去の文献紹介】
2014年01月09日 【第5回】  結氷する停滞性水域の水質に対する気候変動の影響
2013年12月12日 【第4回】  地球温暖化がスキー場の積雪量や滑走可能日数に及ぼす影響予測-気象庁RCM20予測を用いて-
2013年11月14日 【第3回】  地球温暖化が農林水産業に及ぼす影響評価と緩和及び適応技術の開発 ~農林水産省~
2013年10月10日 【第2回】  気候変動監視レポート2012 ~気象庁~ 
2013年09月12日 【第1回】  地球温暖化予測情報 第8巻 ~気象庁~ 


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