【第7回】

いよいよ3月、春がもうすぐですね。今年の桜は、『平年並みか早く』咲くところが多いとのこと。気分も高鳴りますね。そのような季節に、横浜で2014年3月25日(火)から29日(土)まで、IPCC第5次評価報告書第2作業部会会合及び第38回総会が開催されます。(http://www.city.yokohama.lg.jp/ondan/ipcc/ipcc/)
この総会では、現在作成作業中のIPCC第5次評価報告書のうち、温暖化の影響・適応・脆弱性に関する最新の科学的知見をとりまとめる第2作業部会報告書が承認される予定です。どのような報告書になるのか、楽しみですね。

さて、日本でも少し前になりますが、日本と途上国における気候変動の影響及び適応に関して科学的知見を明らかにし、適応のあり方を提示すること等を目的として2008年6月にレポート「気候変動への賢い適応」(環境省 地球温暖化影響適応研究委員会)がとりまとめられています。 今回は、このレポートからその主要な結論と北海道の食料分野に関する記載についてみていきます。

◆◆◆ 気候変動への賢い適応 ◆◆◆
◇◇◇ 環境省 地球温暖化影響適応研究委員会(2008) ◇◇◇


このレポートは、「気候システムの温暖化は疑う余地がない」「気候変動の更なる影響は回避することができない」とするIPCC第4次評価報告書、及び太平洋・西インド諸島・インド洋などにある低地の島国やアフリカなど脆弱性の高い途上国について論じられることの多かった適応策が、日本のような適応能力の高い先進国においても、気候変動の影響に対し予防的に対処する適応策を検討する必要が生じていることが背景であるとしています。

そこで、

(1)日本及び気候変動に脆弱な途上国の気候変動の影響や適応策に関する科学的知見を明らかにする。
(2)賢い適応(効果的・効率的な適応)のあり方
(3)(1)(2)の検討を通じて日本及び気候変動に脆弱な途上国における影響や適応に関する今後の研究の方向性

を提示することをレポートの目的としています。対象時期は、2050 年、2100 年という長期的な将来を見通しつつも、適応策を考える上での中間時点として 2020~2030 年という比較的短期の年次に焦点をあて、各分野の影響・適応に関する既存の研究知見を整理しています。また、今後の研究の方向性については、約3年先(2011年)までに実施すべき研究内容を想定して検討したとしています。

レポートは気候・社会シナリオの概要と8分野(食料、水環境・水資源、自然生態系、防災・沿岸大都市、健康、国民生活・都市生活、途上国)からの報告となっていますが、レポートの主要な結論は以下のとおりとなっています。

(1)日本でも、既に気候変動の影響が現れている。特に、今世紀に入って以降、影響は急速に現れつつある。
(2)今後、国民生活に関係する広い分野で一層大きな影響が予想される。
(3)日本の自然や社会が有する脆弱性に気候変動の影響が重なると、社会の安全と安定にとって、厳しい影響が生じ得る。
(4)気候変動の悪影響に対して「賢い適応(効果的・効率的な適応)」が必要である。
(5)適応策を実施できる体制を構築するため、さらに検討を重ねるとともに日本における適応計画を策定することが必要である。
(6)特に脆弱な途上国に対する協力・支援が必要である。
(7)最新の科学的知見の整理とともに、さらなる研究・検討が求められている。

北海道に関する記載の例として、食料分野からいくつかみていきましょう。

〇コメ
温暖化の進行に伴って、北海道と東北の一部で最適出穂期(しゅっすいき:4~5割の穂が出穂した時期のこと)が早まり、関東以西では遅くなることが明らかになったとしています。また、気象環境条件から県別の収量を推定するモデル(広域水稲収量予測モデル)でコメ収量を推計した結果、北海道では増収、西日本では減収する傾向が示されたとしています。(下図)

(出典:『気候変動への賢い適応』第2章食料分野P10図2-8より)
(URL:http://www.env.go.jp/earth/ondanka/rc_eff-adp/report/part2chpt2.pdf


〇リンゴ
リンゴでは、栽培に適する年平均気温 6~14℃の地域が温暖化に伴い北上し、2020年代には北海道の平野部全域が栽培適温域となることと予測されています。その一方で、2060年代には東北中部の平野部が栽培不適となる可能性を指摘しています。(URL:http://www.env.go.jp/earth/ondanka/rc_eff-adp/report/part2chpt2.pdf#page=12

〇回遊魚
サケ類では日本周辺での生息域が減少し、オホーツク海でも2050年頃には適水温海域が無くなるのではないかと懸念されています。また、ニシンやスルメイカが現在よりも北上して、漁場の変化が予測されることなどが記載されています。(URL:http://www.env.go.jp/earth/ondanka/rc_eff-adp/report/part2chpt2.pdf#page=15

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IPCC第4次評価報告書第2作業部会報告書(影響・適応・脆弱性)が公表されたのは2007年4月のことです。
その後、今回ご紹介した「気候変動への賢い適応」が報告されたわけですが、横浜での作業部会のあとではどのような研究が日本で進むのでしょうか?今後も注目ですね。



【今回ご紹介した文献はこちら・・・】
http://www.env.go.jp/earth/ondanka/rc_eff-adp/index.html


【過去の文献紹介】
2014年02月13日 【第6回】  家庭・業務部門の温暖化対策 ~藤沼康実(国立環境研究所)ほか(2008)~
2014年01月09日 【第5回】  結氷する停滞性水域の水質に対する気候変動の影響
2013年12月12日 【第4回】  地球温暖化がスキー場の積雪量や滑走可能日数に及ぼす影響予測-気象庁RCM20予測を用いて-
2013年11月14日 【第3回】  地球温暖化が農林水産業に及ぼす影響評価と緩和及び適応技術の開発 ~農林水産省~
2013年10月10日 【第2回】  気候変動監視レポート2012 ~気象庁~ 
2013年09月12日 【第1回】  地球温暖化予測情報 第8巻 ~気象庁~ 


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